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Go West ! ルート66 の旅 8/8 <ニューメキシコ州> [>route 66]

 

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ルート66の旅は、今回が最終回です。これまでシカゴの起点を出発しニューメキシコ州アルバカーキまでやってきました。とても長い旅ですが、各町にはそれぞれ色があり、住人の生活があり、日本では伝えられていない真のアメリカを感じるものとなりました。日本人向けのパッケージツアーやガイドもないので、実際にルート66を旅することは簡単ではないかもしれませんが、短期間のツアー旅行では得ることの出来ないものを心に溜めることができました。

 

さて、今回もニューメキシコ州を紹介します。テキサス州からニューメキシコ州に入りツゥクムカリ、サンタ・ロサという懐かしさの漂う2つの町を通り過ぎました。そして、ルート66は2つにわかれます。前回は1937年以前のルート66を旅しました。大きく北に迂回するルートです。今回は1937年以降のルート66です。ほぼ西にまっすぐのびる山岳道路です。

 

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ご存じの通り、アメリカには国内に時差があります。西に向かって走る我々は時間帯のラインを越えると時間を1時間戻すということをしました。タイムゾーンが変わると1時間得するのです。大きく引いてみると、我々は太陽を追いかけて走っているのです。でも太陽の速度(地球の自転)のほうが車の速度よりも早いので、時間はどんどん経っていってしまいます。ただ、ちょっとだけですが時間のマジックが起こります。太陽は先に行ってしまいますが、ちょっとだけ追いついていくのです。

 

ニューメキシコ州の1937年以降のルート66は、州間高速40号線に塗りつぶされています。結果我々は高速道路をかなりのスピードで走ることになります。その時間が丁度夕方に重なると、かなり長い間マジックアワーを楽しめることになるのです。普通マジックアワーというのは、日が暮れる15分程度で終わってしまいます、我々が体験したのは、1時間以上も延々とマジックアワーが続くのです。夕日を追いかけ20分くらい経つと、空は赤くなります。速度を上げ西に走り続けると、40分以上この美しい夕焼けを見ることが出来ます。そして赤い空は紫色になりました。この不思議な色の空も20分くらい続きます。そしてやっと暗くなり、夜へと向かうのです。

 

この空のマジック。真西に走る高速道路で、晴れた日ならば世界中どこでも体験できますが、かなりの距離をまっすぐ西に進まなければならないため日本では不可能です。アメリカなど東西に長い土地があり、しかも平らであることが条件となると、実はそれほど体験できる場所がないような気がします。皆さんもアメリカ横断する際は、是非この1時間以上もある魔法の時間を体験してみてください。

 

州間高速40号線は、大きな山脈を上り始めます。ニューメキシコ州に入ってからすでに標高はかなり高くなっていますが、さらに登っていくのです。我々は、ここで雪に見舞われました。道になにやら白い粉が落ちているなあと思っていたらもの凄い勢いで雪が降ってきます。日本だったら道路は閉鎖されるでしょう。しかしアメリカでは特に規制もなく大型トラックがかなりのスピードで走っています。さらに進むと、パワーのない車がスリップしています。それでもなんとか事故を起こさず走り続けていました。そういう間にどんどん高度は上がっていきます。遂に路肩にはスリップして車線を外れた事故車が無数に現れます。近くに町はないようですが、パトカーが事故車両の脇に止まっています。この時期、毎日何台のパトカーが出動しているのでしょう。そして何人の警察官が常駐しているんでしょう。とにかく次から次へと事故車が見えてきます。殆どが単独事故です。複数の車両が衝突するケースは少ないようでした。事故が多発している光景を見て、車のスピードは一気に落ちます。そして渋滞が発生しました。雪の降る山の中で、慈渋滞すると、なんとなく嫌な雰囲気が漂います。どのドライバーも一刻も早くこの場を通り過ぎたいという焦りとスピードを出すと事故を起こす確率がとても高いというジレンマに陥っているのです。

そして1時間くらいすると道路は下り坂となり、だんだん高度が下がっていきました。それに伴い雪の量も少なくなっていきました。ただ、この下り坂が結構険しく、油断すると車ごと谷底に落ちてしまいます。ここでスリップしたら命はないでしょう。慎重に慎重にエンジンブレーキを使いながら坂を下っていきました。

 

するとアルバカーキの夜景が見えてきました。この町の光を見て安堵のため息がでました。アルバカーキの町は雪すら降っておらず、至って普通の生活をしている普通の町でした。数時間前の豪雪地帯のドライブはまるで悪夢のように感じました。

 

Town of Albuqurque

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アルバカーキはニューメキシコ州最大の都市で、人口は45万人だそうです。10階以上の高層ビルが9つあり、小規模ながら摩天楼を形成しています。町には学生の姿がおおく見られ夜はナイトクラブなどが賑わっています。旧ルート66は、町中を走っていて「ルート66ダイナー」とか「ルート66モーテル」という名の商業施設がかなりあります。

アルバカーキは、現在映画の町として有名です。「ハイスクール・ミュージカル」の舞台もアルバカーキです。現在アルバカーキは映画TV産業に対し特別な税制措置をとっています。撮影で使った制作費の中でアルバカーキで支払った税金を戻しているのです。100億円規模の映画の消費税はアメリカでは10億円程度です。これが戻ってくると言うことは、単純に税金分の節約になると言うことです。現在おおくのハリウッド映画が、ロサンゼルスではなくアルバカーキで撮影されているのはこういうからくりがあるのです。

政府は、この税制措置で何を得ているのでしょう?まず雇用があります。映画産業が定期的にアルバカーキを使うことでスタッフの雇用がうまれます。これにより失業率が減るのです。次にロサンゼルスから訪れるスタッフ、キャストが映画制作以外で落とすお金もかなりの量になるのです。これが町の商業を潤します。このように税で損して、その他で大きく理を取っているのです。

日本では、各町にロケーションボックスなるものができていますが、内情はただの田舎のミーハー集団で、映画産業にはメリットがありません。こういう本来の行政のシステムを日本は何故学ばないのか不思議です。

アルバカーキを歩いていると、映画撮影に出会えたりしますし、アルバカーキで撮影された映画のロケ地巡りをするのも楽しいですね。

ルート66関連だと、Royal Motor Inn、 Town Lodge Motel、 Aztec Motelなどの見所があります。

 

Night View of  Albuqurque

アルバカーキの夜景は、アメリカで一番だという人がいる程とても美しいです。それはニューヨークのものでもないしグリフィス・パークから見るロサンゼルスのものとも違います。星を鏤めたような横に広い夜景です。町の周りには何もないので、夜景が余計に引き立っているのです。この夜景を見るには、町の西側がベストポジションです。州間高速40号線は、アルバカーキを出ると緩やかに高度を上げていきます。この途中から見る夜景が最も美しいはずです。

 

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Granz Restaurant

アルバカーキを出ると、そこはメサが立ち並ぶ山脈です。丁度アメリカ大陸のコンチネンタル・ディバイドがある地域です。ここを境に雨は西海岸と東海岸に流れていくのです。景色はグランドキャニオンやモニュメント・バレーのような奇妙なものに変わってきます。このあたりはグランド・サークルと呼ばれるアメリカ国立公園郡の東端ということになります。山と言うより垂直に切り立った壁のようなメサ、その上に住む人々、深く削り取られた渓谷が現れてきます。急に別の惑星に来てしまったような景色に驚かされますが、このような不思議な景色は、この先アリゾナ州が終わりカリフォルニア州に入る手前まで続くのです。

グランツ(Granz)は、そんな地球ではないような景色の中にポツンとある町です。人口は9000人。かつて鉄道建設のために作られた町だそうですが、現在は農業が主要産業だそうです。そんな町にルート66が通ったので、宿場町という顔も持つことになりました。町は長閑で古き良きアメリカを残しています。グランツ・レストランもそんな佇まいの食堂です。

 

グランツからは、さらに標高が上がります。我々が行った時は、猛吹雪でした。アルバカーキ手前の山越え以上の雪となり、クラッシュしている車は数知れず、なんだか大変なことになってきました。それでもなんとかニューメキシコ州の端まで行こうと決意し、西に向かいました。結果直に遭遇することもなく無事予定通りルート66を走破しましたが、今振り返ってみるとグランツ-ギャラップ間はとても危険でした。

 

Roadrunner Motel

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ニューメキシコ州最後の町ギャラップにあるなんともかわいいモーテルです。隣にカフェも併設されています。ギャラップは旧ルート66がメインストリートになっていますので、観光は簡単です。町の東にこのロードランナー・モーテルがあり、西に次に紹介するエル・ランチョがあるので、その間を散策すれば良いのです。この町は、古き良きアメリカ、60年代のアメリカ文化の色を残しつつ、西部開拓時代の色も併せ持っています。この2つの相容れないデザインセンスが混じっているのが面白かったです。東側が60年代のアメリカ、そして西側が西部劇のようです。それがグラデーションとなって変わっていきます。

 

Motel El Rancho

かつて西部劇が全盛だった1937年にグリフィスによって建てられたのがエル・ランチョです。この町には、撮影のベースが作られました。エル・ランチョはハリウッドからやってくるキャストやスタッフを収容する豪華なホテルとして繁栄したのです。ホテルに入るとここに滞在したスターの写真が飾られています。映画史に残る有名人の殆どはこのホテルに来ているのではないでしょうか。ジョン・ウェイン、ロナルド・レーガン...彼らがここにいたことを考えるだけで楽しくなります。

現在もこのホテルは営業中です。

 

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Diary from the Traveler -----
イリノイ州、ミズーリ州、カンザス州、オクラホマ州、テキサス州、ニューメキシコ州と6州を横断したルート66の旅、遂にここギャラップで終了です。ギャラップを出ると、すぐアリゾナ州に入ります。アリゾナ州から先カリフォルニア州サンタモニカの終点までは、既に旅しており、その記録はこのブログに記しています。

ルート66全てを走ってみてわかるのは、アメリカという国の魅力とそこに住む人々の素晴らしさです。印象に残ったのは、景色というより住人の作り出した文化や彼らとの交流です。こういうアメリカの良い部分が日本で報道されていないのはとても残念です。 8回に渡りお伝えしたルート66の旅、お付き合いありがとうございました。


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SAKANAKANE

8回に渡る旅行記、堪能させて頂きました。
アメリカには行ったコトが有りませんし、知識もほとんど無いので、新鮮で楽しかったです。
やはり、日本人が普通にイメージする観光旅行では、その魅力に充分に触れるコトはできないのでしょうね。
by SAKANAKANE (2010-02-21 15:52) 

Traveler

SAKANAKANEさん、こんにちは。
8回読んでいただきありがとうございました。
普段、ツアーなどで味わえない旅を感じていただけて嬉しいです。
これからも宜しくお願いします。
by Traveler (2010-02-21 21:50) 

ミモザ

こんばんは♪ とっても面白かったです!
アメリカに対する印象が変わりました。
写真も綺麗でお洒落でセンスがいいですね。
by ミモザ (2010-02-22 20:04) 

Traveler

ミモザさん、こんにちは。
褒め頂き嬉しいです。
ミモザさんも、是非アメリカの旅をしてください。
by Traveler (2010-02-23 01:08) 

かおり

更新されたのがわかっててもじっくりと読みたいのでなかなか訪問できませんでした(笑)
今回は過去記事にも増して内容の濃い旅を、共に楽しませていただいた気分です♪
たくさんの写真を添えて、ぜひ!書籍化を♥


by かおり (2010-02-23 12:06) 

Traveler

かおりさん、こんにちは。
読んでいただきありがとうございました。
このブログは、別サイトでさらに充実させていこうと思います。
たまに覗いてみてください。
by Traveler (2010-02-23 12:52) 

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